建設業

遠隔臨場の導入手順|通信環境・機材・運用ルールの決め方

公開 4分で読めますPactom 編集部
現場で施工箇所を確認する職人の手元

遠隔臨場は移動時間の削減効果が大きい一方、通信環境と映像の見え方で成否が分かれます。対象工種の選び方、機材構成、通信が不安定な現場への対処、発注者との合意事項までを実務ベースで解説します。

この記事の要点

  • 対象は「見れば判断できる確認」に限る。触診や計測を伴う検査は代替できない
  • 失敗の大半は通信。事前の電波調査と、録画による事後確認の併用で回避できる
  • 映像だけでは寸法が分からない。スケールを画面内に入れる撮影ルールが必要
  • 削減効果は移動時間だけでなく、日程調整の往復回数の減少にも現れる

遠隔臨場は、移動時間の削減効果が大きく、比較的短期間で成果が出る取り組みです。一方、通信環境と映像の見え方という2つの実務課題があり、ここを詰めずに始めると「結局現場に行くことになった」という結果になります。

本記事では、対象の選び方から機材構成、通信対策、運用ルールまでを順に解説します。

遠隔臨場とは?

遠隔臨場とは、現場に立ち会うべき確認行為を、映像と音声を通じて遠隔から行う方法です。段階確認、材料確認、立会確認の一部が対象になります。

目的は確認の省略ではなく、移動の削減です。したがって、確認の質を落とさずに映像で代替できる範囲を見極めることが設計の中心になります。

対象工種の仕分け

確認の種類遠隔の可否理由
材料の受入確認(外観・数量)目視で判断できる
配筋の段階確認条件付き可本数・間隔は映像で確認可。かぶりは計測が必要
出来形の寸法確認条件付き可スケールを画面内に入れる撮影ルールが必要
打音検査不可音と触感による判断
仕上がりの色・質感条件付き照明と画質の影響を受ける
安全設備の設置確認設置の有無は映像で判断できる

仕分けの基準は単純で、その確認が「見れば分かる」ものかどうかです。触る、叩く、測るという行為が必要な確認は対象外にします。

機材構成|まずは手持ちの機材から

機材用途必要性
スマートフォン/タブレット撮影・通話必須
モバイル回線通信必須
ウェアラブルカメラ両手を使う作業の撮影推奨
三脚・自撮り棒固定撮影、高所の撮影状況による
照明暗所(地下、内部)状況による
外部マイク屋外の風切り音対策状況による

最初から高価な機材を揃える必要はありません。まずスマートフォンで数回実施し、不足した点だけを補う順序が無駄になりません。

実施してみると、多くの現場で最初に不足するのは照明とマイクです。映像は映っていても、暗くて判別できない、風の音で会話が成立しない、という理由で確認が止まります。

通信対策|失敗の大半はここ

遠隔臨場がうまくいかない原因の大半は通信です。事前と当日の両面で対策します。

事前

  • 現場内の主要な確認場所で電波強度を測る
  • 通信できる位置と、できない位置を図面上に記録する
  • 複数キャリアの回線を検討する(現場によって差が大きい)

当日

  • 映像の解像度を落として安定性を優先する設定を用意しておく
  • 通信が途切れた場合の代替手順を決めておく(後述)

通信が確保できない現場

リアルタイム中継にこだわらず、録画して後から共有する方式に切り替えます。判断に必要な情報(対象、スケール、周囲の状況)が映っていれば、同時性がなくても確認は成立する場合が多くあります。

この方式は、発注者との事前合意があれば有効な選択肢になります。「リアルタイムでなければ遠隔臨場ではない」と考えると、通信環境の悪い現場では一切使えないという結論になってしまいます。

撮影ルールを決める

映像で確認する以上、撮り方が判断の質を左右します。最低限、次のルールを決めます。

ルール理由
スケール(メジャー、黒板)を画面内に入れる映像だけでは寸法が分からない
全体 → 近接の順で撮る位置関係が分からないと判断できない
手ぶれを抑える(固定して数秒静止)動きの多い映像は判別しづらい
撮影者が対象を口頭で説明する何を映しているかが伝わる
逆光を避ける白飛びで判別できなくなる

2番目の全体から近接へという順序は特に重要です。近接映像だけを送られても、それが構造物のどの部分なのかが分からず、確認する側が判断できません。

発注者と合意しておく事項

項目決めること
対象工種どの確認を遠隔で行うか
通信手段・機材使用する機器と回線
記録録画・写真の保存形式と保存期間
通信断時の扱い中断して再実施か、録画方式に切り替えるか
立会者遠隔側に誰が入るか
実施要領公共工事では発注者の要領に従う

4行目を決めていないと、通信が切れた時点で現場が止まります。中断時の判断を事前に決めておくことが、実務では効果的です。

効果の測り方

指標測り方
移動時間の削減遠隔で実施した件数 × 往復の想定時間
日程調整の往復回数検査日程を決めるまでのやり取り件数
待ち時間検査依頼から実施までの日数
実施件数遠隔で実施できた件数/全確認件数

移動時間だけでなく、日程調整の往復回数にも効果が現れます。現地に行く前提だと日程の候補が限られますが、遠隔なら短時間で調整できるため、依頼から実施までの日数が短くなります。この短縮は工程の余裕に直結します。

まとめ

遠隔臨場は、対象を「見れば判断できる確認」に絞り、通信対策と撮影ルールを先に決めることで実用になります。通信が確保できない現場では録画方式に切り替える選択肢を持っておくと、適用範囲が広がります。

効果は移動時間の削減だけでなく、日程調整と待ち時間の短縮にも現れます。測定するときは、この2つを併せて見てください。

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参考

よくある質問

Q. 遠隔臨場はどの検査に使えますか?
材料確認、段階確認のうち目視で判断できるもの、立会確認の一部が対象になります。一方、打音検査や実測を伴う確認、触感で判断する項目は代替できません。工種ごとに「映像で判断できるか」を仕分けし、対象を明確にしてから運用を始めてください。
Q. 通信が不安定な現場ではどうすればよいですか?
事前に現場内の電波状況を測り、通信可能な位置を把握しておきます。それでも不安定な場合は、リアルタイム中継にこだわらず、撮影した動画を後から共有する方式に切り替えます。判断に必要な情報が揃っていれば、同時性がなくても確認は成立します。
Q. どんな機材を用意すればよいですか?
スマートフォンまたはタブレットとモバイル回線があれば始められます。加えて、ハンズフリーで撮影するためのウェアラブルカメラ、明るさが不足する場所での照明、屋外での音声を確保するマイクを状況に応じて追加します。最初から高価な機材を揃える必要はありません。
Q. 発注者との間で何を合意しておくべきですか?
対象工種、使用する機材と通信手段、記録の保存方法と保存期間、通信が途切れた場合の扱い、立会者の範囲です。とくに通信断時の扱いを決めていないと、その場で判断ができず現場が止まります。実施要領がある場合はその内容に沿って運用します。

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