製造業

IoTセンサー導入の判断基準|後付けで取れるデータ・取れないデータ

公開 4分で読めますPactom 開発チーム
工房で機械を使って作業する職人

既存設備へのセンサー後付けは、何が取れて何が取れないかを理解しないと投資が無駄になります。電流・振動・温度・画像それぞれで分かること、サンプリング周期の決め方、通信方式の選び方を実務ベースで解説します。

この記事の要点

  • 後付けで確実に取れるのは「稼働の有無」。加工条件など内部状態は基本的に取れない
  • センサーを増やす前に、既存のPLC・制御盤から取得できるデータを確認する
  • サンプリング周期は「捉えたい現象の周期の10倍以上」が目安。粗いと現象が消える
  • データを貯めるだけでは価値が出ない。何を判断するために取るかを先に決める

IoTセンサーの導入相談では、「まずデータを取ってみよう」という進め方が少なくありません。しかし、取得したデータで何を判断するのかが決まっていないと、貯めたデータは使われずに終わります

本記事では、後付けで何が取れて何が取れないかを整理し、センサー選定とサンプリング設計の判断基準を解説します。

まず既存の取得源を確認する

センサーを追加する前に、既に取得できるデータがないかを確認します。多くの工場で、次の情報が未活用のまま存在しています。

取得源得られる情報追加投資
PLC・制御盤稼働信号、サイクルタイム、アラーム履歴ほぼ不要(接続工事のみ)
設備の通信機能加工条件、設定値(設備依存)不要
生産管理システム生産実績、停止理由不要
検査記録品質データ不要

PLCから取得できる情報は、後付けセンサーより質が高いことが多くあります。設備が稼働中かどうか、1サイクルに何秒かかったか、どのアラームが出たかは、外から観測するより正確です。

後付けセンサーで取れるもの・取れないもの

取れる取れない
稼働の有無(電流、信号灯)加工条件の設定値
負荷の傾向(電流値の変化)制御ロジックの内部状態
振動の変化(軸受、回転体)材料の内部品質
表面温度(サーモ、接触式)内部温度の正確な値
外観(カメラ)見えない部位の状態

この区別が導入判断の起点になります。「予知保全のために温度と振動を取る」という計画は妥当ですが、「加工条件の最適化のために後付けセンサーを付ける」という計画は、そもそも必要なデータが外から取れない可能性が高くなります。

センサー別の使いどころ

電流センサー

最も汎用性が高く、最初に選ばれることが多いセンサーです。

分かること精度
稼働/停止高い
負荷の増減傾向中〜高
摩耗の進行(負荷の緩やかな上昇)
突発的な異常(急激な変動)

配線に挟むだけで設置でき、設備を改造しません。まず電流で全体を把握し、説明できない現象が出た箇所に他のセンサーを追加する進め方が効率的です。

振動センサー

回転体・軸受の異常検知に有効です。設置位置と固定方法で結果が大きく変わります。

  • 測定対象に近い剛性の高い箇所に固定する
  • 磁石固定は簡便だが、高周波域では接触状態の影響を受ける
  • 同一設備でも設置位置が違うと比較できない

複数台を比較する場合、設置位置を統一しないとデータが比較できません。台帳に設置位置を記録しておく運用が必要です。

温度センサー

過熱の検知には有効ですが、変化が緩やかなため、急な異常の検知には向きません。周囲温度の影響を受けるため、季節変動を考慮した基準が必要です。

カメラ

外観に現れる異常(漏れ、詰まり、位置ずれ)の検知に使えます。照明条件が安定していることが前提です。

サンプリング周期の決め方

目的必要な周期データ量の目安
稼働状況の把握1秒に1回小さい
負荷傾向の分析100ミリ秒に1回
回転体の振動解析数kHz以上非常に大きい
温度の監視1分に1回非常に小さい

原則は、捉えたい現象の周期に対して10倍以上の頻度です。周期が粗いと、現象そのものがデータに現れません。逆に必要以上に細かくすると、通信と保管のコストが急増します。

振動解析のような高頻度データは、生データを全て送るのではなく、現場側で特徴量(実効値、周波数成分のピークなど)に変換してから送る構成が一般的です。

通信と保管の構成

構成向いている用途注意点
有線(Ethernet)常時・高頻度の取得配線工事が必要
無線(Wi-Fi)既存インフラの活用金属環境で不安定になりやすい
無線(LPWA)低頻度・広範囲高頻度データは送れない
現場サーバー+定期送信高頻度データの集約現場側の機器管理が必要

工場は金属構造物が多く、無線が安定しないことがあります。導入前に設置予定場所で電波状況を測ることを推奨します。

データを貯める前に決めること

決めること具体例
何を判断するか「軸受の交換時期を1か月前に把握する」
判断に必要な情報振動の特定周波数成分の推移
判断の基準基準値の1.5倍を超えたら点検
誰が見るか保全担当が週次で確認
対応の手順点検→部品手配→計画停止で交換

この5項目が埋まらないうちにセンサーを設置すると、データは溜まるが誰も見ないという状態になります。逆に埋まっていれば、必要なセンサーとサンプリング周期は自ずと決まります。

段階的な進め方

時期取り組み到達点
1か月目既存データの棚卸し、判断目的の明確化追加取得の要否が分かる
2〜3か月目1設備に電流センサーを設置、稼働把握稼働率と停止傾向の可視化
4〜6か月目説明できない現象に対して追加センサー現象と数値の対応づけ
7〜12か月目対象設備の拡大、基準値の設定異常検知の運用開始

まとめ

IoTセンサーの導入は、既存の取得源を確認し、判断目的を決めてから選定すると無駄がありません。後付けで確実に取れるのは稼働の有無と負荷の傾向であり、設備内部の設定値は基本的に取得できません。

サンプリング周期は目的から決め、高頻度データは現場側で特徴量に変換してから送る。この設計であれば、通信と保管のコストを抑えながら必要な情報を確保できます。

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参考

よくある質問

Q. 古い設備でもセンサーを後付けできますか?
できます。電流センサーは配線に挟むだけで設置でき、振動センサーは筐体に磁石で固定できるものがあります。信号灯の点灯状態を読み取る方式も広く使われています。ただし取得できるのは主に外形的な情報で、設備内部の加工条件や制御値は取得できません。
Q. どのセンサーから始めるべきですか?
電流センサーが最も汎用性が高く、稼働の有無・負荷の傾向・異常の兆候をまとめて捉えられます。まず電流で稼働状況を把握し、それでは説明できない現象があった時点で、振動や温度を追加する順序が無駄になりません。
Q. サンプリング周期はどう決めればよいですか?
捉えたい現象の周期に対して10倍以上の頻度が目安です。回転体の異常を振動で捉えるなら数kHz以上が必要ですが、設備の稼働状況を把握するだけなら1秒に1回でも足ります。周期を上げるほどデータ量と通信・保管コストが増えるため、目的から決めてください。
Q. データはクラウドに送るべきですか?
用途によります。分析や複数拠点での比較にはクラウドが適しますが、高頻度データを常時送ると通信量が問題になります。現場側で集約・間引きしてから送る構成が一般的です。制御に使う即時性の高い判定は、現場側で処理する設計にします。

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Pactom 開発チーム

株式会社Pactomは、製造業・建設業・小売/物流を中心に、AI導入の課題整理からユースケース設計、実装、運用定着までを一貫して支援しています。

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