建設業

建設業の時間外労働をDXで減らす|効果が出る順に施策を並べる

公開 5分で読めますPactom 編集部
台車を押して市街地を移動する作業服姿の職人

労働時間の削減は、施策の順序を間違えると効果が出ません。現場監督の時間が実際どこに消えているかを測り、削減効果の大きい順に手を打つ方法を、移動・書類・待ち時間の3領域に分けて解説します。

この記事の要点

  • 施策を選ぶ前に、現場監督の1週間の時間内訳を実測する。感覚で決めると外す
  • 削減余地が大きいのは、作業そのものより「移動」と「待ち」の時間
  • 書類作業の削減は効果が読みやすく、稟議を通しやすい最初の一手になる
  • 工期・人員が変わらないまま時間だけ減らす施策は、現場に無理を押しつけるだけで続かない

労働時間の削減は、施策の選び方より順序で結果が変わります。効果の小さい施策から着手すると、現場の協力を得られないまま予算だけを消費することになります。

本記事では、現場監督の時間がどこに消えているかを測る方法と、削減効果の大きい順に施策を並べる考え方を解説します。

まず時間の内訳を実測する

施策の議論を始める前に必要なのは、現状の把握です。感覚で「書類が多い」と判断して着手すると、実際には移動時間のほうが大きかった、という事態が起こります。

実測の方法はシンプルで構いません。

  • 対象:現場監督3〜5名
  • 期間:1週間(繁忙期と閑散期の両方があれば理想的だが、まず1週間で足りる)
  • 単位:15分
  • 区分:現場立会 / 書類作成 / 打ち合わせ / 移動 / 待ち / その他

区分は6つ程度に抑えます。細かくすると記録自体が負担になり、精度が落ちます。

典型的な内訳の例

区分週あたり割合削減余地
現場立会・施工管理20時間33%
書類作成・写真整理14時間23%
打ち合わせ10時間17%
移動9時間15%
待ち(検査、資材、承認)5時間8%
その他2時間4%

※あくまで一例です。実測すると現場ごとにかなり違いが出ます。

この表で着目すべきは、現場立会そのものより、書類と移動の合計のほうが大きいという構造です。施工管理の本来業務を削るのは難しくても、その周辺には削減余地があります。

効果が出る順に施策を並べる

順序施策削減対象着手の容易さ効果が出るまで
1写真台帳の自動生成書類作成高い即日〜1か月
2日報・報告書の生成AI活用書類作成高い1か月
3遠隔臨場(検査の一部)移動・待ち2〜3か月
4電子承認(決裁の電子化)待ち2〜3か月
5工程の可視化・共有打ち合わせ3〜6か月
6配筋検査などの画像判定現場立会低い6か月以上

上から順に、着手が容易で効果が早い施策を並べています。1と2は既存の業務フローを変えずに導入でき、削減時間が測りやすいのが利点です。

領域1|書類作業の削減

最も着手しやすく、効果が読みやすい領域です。

対象書類削減方法削減の目安
写真台帳施工管理アプリの自動生成月8〜15時間
日報定型部分のテンプレート化+音声入力月4〜8時間
打ち合わせ議事録録音からの自動文字起こしと要約月3〜6時間
安全書類過去書類を下敷きにした生成月2〜5時間

注意点は、生成された文書をそのまま提出できるとは限らないことです。確認と修正の時間を必ず計上してください。「作成30分→生成5分+確認10分」であれば削減は15分であり、25分ではありません。

領域2|移動時間の削減

移動は削減余地が大きい一方、関係者との調整が必要になります。

  • 遠隔臨場:段階確認や材料確認の一部を映像で実施する。対象工種と通信環境の事前確認が前提
  • 検査の集約:同一エリアの複数現場をまとめて回る日を決める
  • 打ち合わせのオンライン化:定例のうち、図面を見ながらの確認は画面共有で代替できる場合が多い

遠隔臨場は発注者の合意が必要なため、公共工事では実施要領を確認します。民間工事では発注者との個別合意になります。

領域3|待ち時間の削減

待ち時間は記録に残りにくく、実測して初めて可視化される領域です。

待ちの種類原因対処
承認待ち紙の回覧、担当者不在電子承認、代理承認の設定
資材待ち入荷情報の共有不足入荷予定の共有、前倒し発注
検査待ち日程調整の往復検査日の定例化
図面の回答待ち質疑の滞留質疑一覧の可視化と期限設定

承認待ちは電子化の効果が明確に出る領域です。紙の決裁で3日かかっていたものが当日中に回れば、その分だけ工程の余裕が生まれます。

削減した時間の行き先を決めておく

施策を実行しても総労働時間が減らない典型的な原因は、空いた時間に別の作業が入ることです。導入前に、削減分をどう扱うかを決めておく必要があります。

方針効果の現れ方向いている状況
残業時間の削減に充てる労働時間が直接減る時間外が上限に近い
担当現場数を増やす一人あたりの生産性が上がる人員が不足している
品質管理・安全管理に充てる手戻りや事故が減る品質課題を抱えている

どれを選ぶかは経営判断ですが、決めずに始めると効果が測れません。実測した時間内訳を再度取り、削減分がどこに移ったかを確認する運用まで含めて設計してください。

協力会社に負担が移っていないか確認する

元請の作業が減っても、その入力が協力会社に移っただけであれば、現場全体の労働時間は変わっていません。施策ごとに、誰の時間が増減したかを一覧にします。

施策元請の時間協力会社の時間全体
写真台帳の自動生成変化なし
日報のアプリ入力やや増やや減
検査記録の現場入力大きく減要確認

3行目のように協力会社側の負担が明確に増える施策は、入力の手間を最小化する設計(選択式、写真からの自動取得)とセットで進める必要があります。

施策の効果を測る指標

労働時間の削減は、総時間だけを見ていると原因が分かりません。次の3層で測ります。

指標測り方
結果月間の時間外労働時間勤怠データ
過程区分別の時間内訳四半期ごとの実測(1週間)
先行書類1件あたりの作成時間、承認までの日数ツールのログ、決裁記録

結果指標だけを追うと、工事量の増減に影響されて施策の効果が見えなくなります。四半期ごとに1週間の実測を繰り返すことで、どの区分が減ったのかを確認できます。

現場ごとの差をどう扱うか

同じ施策でも、現場の規模・工種・発注者によって効果は変わります。全社一律の目標を置くと、条件の厳しい現場で形骸化します。

現場の条件効きやすい施策
協力会社が多い大規模現場情報共有の一元化、電子承認
同時に複数現場を担当遠隔臨場、移動の集約
公共工事で提出書類が多い書類作成の効率化、写真台帳
短工期の改修工事日報・報告の簡素化

まず自社の現場を上表のどの類型が多いかで分類し、最も数の多い類型に効く施策から着手すると、全社での効果が出やすくなります。

まとめ

労働時間の削減は、実測 → 効果の大きい順に着手 → 削減分の行き先を決めるという順序で進めると成果が数字に現れます。最初の一手は書類作業の削減が適しており、続いて移動と待ちに広げていく形が現実的です。

そして、削減した時間の行き先と、協力会社への負担移転の有無。この2点を確認しない施策は、数字が改善しても現場の実感が伴いません。

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参考

よくある質問

Q. 何から着手すれば労働時間の削減効果が大きいですか?
まず1週間の時間内訳を実測してください。多くの現場では、書類作成と移動・待ち時間の合計が全体の3〜4割を占めます。このうち書類作成は効果が読みやすく着手も容易なため最初の一手に向きます。移動は遠隔臨場や検査の集約で削減できますが、関係者との調整が必要です。
Q. 時間の実測はどうやって行いますか?
15分単位の記録を1週間、対象者3〜5名で取ります。分類は「現場立会」「書類作成」「打ち合わせ」「移動」「待ち」「その他」の6区分程度に留めます。区分を細かくすると記録自体が負担になり、精度が落ちます。1週間でも傾向は十分に見えます。
Q. DXツールを入れれば労働時間は減りますか?
ツール単体では減りません。削減されるのは作業時間であり、空いた時間に別の作業が入れば総労働時間は変わらないためです。削減した時間をどう扱うか(残業削減に充てるのか、担当現場数を増やすのか)を先に決めておかないと、効果が数字に現れません。
Q. 協力会社の労働時間まで含めて考えるべきですか?
含めるべきです。元請の書類作成を減らしても、その分の入力が協力会社に移っているだけなら、現場全体の時間は減っていません。施策を評価するときは、誰の時間が増えて誰の時間が減ったかを一覧にして確認してください。

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