建設業

BIM/CIMはどこから始めるべきか|設計・施工・維持管理での使い分けと投資回収

公開 5分で読めますPactom 編集部
改修工事中の建物の入口に停まる作業用の軽トラック

BIM/CIMは「3Dで作る」ことが目的ではありません。設計・施工・維持管理のどの段階で効果が出るかは投資回収の構造が異なります。着手順の決め方、モデルの詳細度(LOD)の落としどころ、失敗しやすいパターンを解説します。

この記事の要点

  • BIM/CIMの投資回収は「干渉チェックによる手戻り削減」で最も早く現れる
  • モデルの詳細度を上げるほど作成工数は増える。目的から逆算してLODを決める
  • 施工段階から始めると、設計データが2Dでも部分的な効果が得られる
  • 維持管理での活用は発注者側の要求がないと回収が難しく、優先度は下がる

BIM/CIMの導入相談では、「3Dモデルを作ること」自体が目的化しているケースが少なくありません。モデルは手段であり、どの工程のどの無駄を減らすのかが決まっていないと、作成工数だけが増えます。

本記事では、設計・施工・維持管理の3段階で効果と回収構造がどう違うかを整理し、着手順の決め方を解説します。

BIM/CIMとは?

BIM/CIMとは、建築物や土木構造物を、形状だけでなく部材の属性情報(材質、寸法、数量、施工時期など)を持たせた3Dモデルとして扱い、設計から施工・維持管理まで同じデータを使い回す取り組みです。

重要なのは後半で、3Dで可視化することが目的ではありません。同じデータを複数の工程で使えるかどうかが、投資回収の分かれ目になります。

3段階で回収構造がどう違うか

段階主な効果効果が出るまで回収のしやすさ
設計整合性の確保、合意形成の迅速化6〜12か月中(設計変更の削減で回収)
施工干渉の事前発見、施工手順の検討3〜6か月高(手戻り削減が直接効く)
維持管理点検記録の一元化、改修時の把握数年低(発注者要求がないと回収困難)

施工段階の回収が最も早い理由は、干渉による手戻りが金額として明確に現れるためです。現場での配管・ダクト・構造材の取り合いを事前に発見できれば、1件で数十万円規模の手戻りが避けられることもあります。

まず干渉チェックから始める

初めて取り組む場合、対象を干渉チェックに絞ることを推奨します。理由は3つです。

  1. 効果が測りやすい:発見した干渉件数と、それを現場で手直しした場合の想定費用を比較できる
  2. モデルの精度要求が低い:外形が正しければよく、内部の詳細は不要
  3. 範囲を限定できる:設備が集中する機械室や、階をまたぐ配管シャフトなど、問題が起きやすい箇所だけをモデル化すればよい

全体をモデル化しようとすると数か月かかりますが、問題が起きやすい部位だけなら数週間で着手できます。

LOD(詳細度)は目的から逆算する

モデルの詳細度を上げるほど、作成工数は加速度的に増えます。目的別の必要水準を整理します。

目的必要な情報不要な情報
干渉チェック部材の外形寸法、位置材質、施工時期、コスト
数量拾い部材の種別、寸法、数量属性内部構造の詳細
施工ステップ検討施工順序、時期の属性細部の形状
維持管理機器の型番、更新時期、点検履歴施工中の一時的な情報

よくある失敗は、将来使うかもしれない情報を先に全部入れようとすることです。属性情報は後から追加できるため、現時点の目的に必要な範囲で止めるほうが、着手も早く無駄もありません。

体制と教育の現実的な組み方

BIM/CIMの立ち上げで最も時間がかかるのは、ソフトの導入ではなく人の習熟です。

役割人数の目安育成期間
モデル作成の実務担当2〜3名3〜6か月
現場での活用担当各現場1名1〜2か月(閲覧・確認が中心)
全体の推進役1名継続

現場担当者全員にモデル作成を習得させる必要はありません。閲覧と干渉箇所の確認ができれば十分で、作成は専任の2〜3名に集約するほうが習熟が早くなります。

失敗しやすいパターン

パターン何が起きるか回避策
全体を高精度でモデル化作成が終わる前に工事が進む部位を絞り、干渉チェックから
目的が「BIMを使うこと」効果を測る指標がない手戻り件数・設計変更件数で測る
担当者1名に依存異動で止まる最低2名、作成手順を文書化
協力会社とのデータ形式不一致変換で情報が落ちるIFCでの受け渡し仕様を事前合意
維持管理から着手回収まで数年かかる発注者要求が出てから対応

4点目は実務上つまずきやすい箇所です。各社が異なるソフトを使っている場合、中間形式(IFC)で受け渡すことになりますが、変換時に属性情報が欠落する範囲を事前に確認しておかないと、受け取ったモデルが使えないという事態になります。

発注者側の要求にどう備えるか

公共工事ではBIM/CIMの活用が段階的に広がっており、発注者から成果品としてモデルの提出を求められる場面が増えています。この場合、社内の効率化とは別に「要求仕様に沿った成果品を作れるか」という論点が加わります。

備えとして確認しておく項目は次のとおりです。

確認項目内容
要求されるモデルの詳細度発注者ごとに水準が異なる。案件ごとに確認する
提出形式ネイティブ形式かIFCか。バージョン指定の有無
属性情報の項目どの属性を、どの粒度で入れるかの一覧
納品時期施工中の中間提出があるか
チェック方法発注者側でどう検証されるか

社内効率化のために作ったモデルが、そのまま成果品として通るとは限りません。属性項目の一覧を早い段階で受け取り、作成手順に組み込んでおくと、後からの手戻りを避けられます。

協力会社・設計事務所との分担

モデルを誰が作るかは、体制によって現実的な選択肢が変わります。

体制向いているケース注意点
自社内製継続的に案件がある、ノウハウを蓄積したい育成に半年以上かかる
外部委託案件が散発的、急ぎで対応が必要修正のたびに費用と時間が発生
設計事務所から引き継ぐ設計段階でモデルがある施工用の情報が不足しがち

3番目は一見効率的ですが、設計モデルは施工手順や仮設物を含まないことが多く、そのままでは施工検討に使えません。引き継ぎ時に、何が入っていて何が入っていないかを一覧で確認する必要があります。

効果測定の指標

指標測り方期待できる変化
事前に発見した干渉件数チェック結果の記録施工中の手戻りが減る
現場からの質疑件数質疑書の件数図面の整合性向上で減少
設計変更の件数・金額変更契約の記録中長期で減少
施工計画の検討時間打ち合わせ時間の記録合意形成が短縮

このうち事前に発見した干渉件数は導入初期から数字が出るため、投資判断の説明に使いやすい指標です。1件あたりの手戻り想定費用を掛ければ、概算の効果額を示せます。

着手の順序

時期取り組み到達点
0〜3か月ソフト選定、担当2〜3名の教育開始基本操作の習得
3〜6か月1案件で設備集中部の干渉チェック発見件数の実績
6〜12か月対象部位を拡大、施工ステップ検討へ施工計画での活用
1〜2年目数量拾いへの展開、社内標準の整備作成手順の標準化
2年目以降発注者要求に応じて維持管理対応属性情報の受け渡し

まとめ

BIM/CIMは、施工段階の干渉チェックから始めるのが投資回収の最短経路です。モデルの詳細度は目的から逆算し、将来使うかもしれない情報を先回りして入れないこと。維持管理での活用は、発注者側の要求と受け渡し仕様が定まってから着手する判断が合理的です。

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参考

よくある質問

Q. BIM/CIMの導入にはどのくらいの期間と費用がかかりますか?
ソフトウェアのライセンスは1人あたり年額数十万円規模、加えて教育期間として1人あたり3〜6か月を見込みます。最も大きいのは人の習熟コストで、既存業務と並行して習得する場合はさらに時間がかかります。まず2〜3名の担当を決め、1案件で実践しながら習得する形が現実的です。
Q. 設計が2D図面でも施工でBIMを使えますか?
使えます。施工段階で2D図面から必要な範囲だけをモデル化し、干渉チェックや施工手順の検討に使う方法は広く行われています。全体を精緻にモデル化する必要はなく、干渉が起きやすい設備集中部や取り合い部分に絞れば、作成工数を抑えながら効果が得られます。
Q. LOD(詳細度)はどの水準にすべきですか?
目的から逆算します。干渉チェックが目的なら、部材の外形寸法が正しければ十分で、内部の詳細は不要です。数量拾いに使うなら部材の属性情報が必要になります。「とりあえず高いLODで作る」と工数だけが増え、使われない情報が積み上がります。
Q. 発注者からBIMの要求がない場合も導入すべきですか?
施工段階の効果は発注者の要求と無関係に得られるため、導入する価値はあります。一方、維持管理を見据えた属性情報の整備は、発注者側の要求と受け渡し仕様が定まっていないと投資が回収できません。この部分は要求が出てから対応する判断が合理的です。

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株式会社Pactomは、製造業・建設業・小売/物流を中心に、AI導入の課題整理からユースケース設計、実装、運用定着までを一貫して支援しています。

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