建設業

ドローン測量とレーザースキャナの使い分け|精度・費用・向いている現場

公開 4分で読めますPactom 編集部
東京の住宅街と工事関係車両のある街並み

3次元測量はドローンとレーザースキャナで得意領域が異なります。地形か構造物か、植生の有無、要求精度、天候の制約という4つの軸で使い分けを整理し、外注と内製の判断、データ処理にかかる実務の負荷まで解説します。

この記事の要点

  • 広い地形の起工測量・出来形はドローン、構造物や屋内はレーザースキャナが基本
  • 植生があるとドローン写真測量は地表面を捉えられない。レーザーは一部透過できる
  • 撮影より後工程(点群処理)に時間がかかる。処理体制を含めて検討する
  • 年間の実施回数が10回を下回るなら、外注のほうが総額は安くなることが多い

3次元測量の相談では、「ドローンとレーザースキャナのどちらを導入すべきか」という問いをよく受けます。しかし両者は代替関係ではなく、得意な対象が異なるツールです。

本記事では、選択の軸を4つに整理し、外注と内製の判断、そして見落とされやすいデータ処理の負荷まで解説します。

4つの軸で使い分ける

ドローン写真測量地上型レーザースキャナ
対象広い地形、土工の出来形構造物、屋内、細部形状
範囲の広さ数ヘクタール規模が得意数十メートル圏が中心
遮蔽・植生苦手(上面しか捉えない)一部は回り込める
天候の制約風・雨で飛行できない屋内なら影響を受けにくい

この4軸で考えると、造成・土工の起工測量や出来形管理はドローン橋梁・トンネル・建物の現況把握はレーザースキャナという基本の使い分けになります。

精度をどう考えるか

「精度が何センチか」という問いには、条件を添えないと答えられません。ドローン写真測量の精度は、次の要素で決まります。

要素精度への影響
標定点(GCP)の数と配置最も影響が大きい。範囲外周と中央に配置する
飛行高度低いほど地上分解能が上がるが、撮影枚数と時間が増える
重複率不足すると点群に穴が空く
対象面の模様の有無模様が乏しい面(新設コンクリート、雪面)は苦手

4行目は見落とされやすい点です。模様のない一様な面は写真測量が苦手で、点群が不安定になります。この条件ではレーザーのほうが確実です。

費用の考え方|内製と外注の分岐点

項目内製外注
初期費用機材+ソフトで数百万円規模不要
1回あたり人件費と処理時間数十万円規模(範囲による)
習熟操縦・処理ともに数か月不要
柔軟性急な再測量に即応できる日程調整が必要

分岐点は年間の実施回数です。回数が少ないうちは外注のほうが総額を抑えられます。目安として年10回を下回る規模であれば、外注で始めて実績を見てから内製化を判断するのが合理的です。

内製化の判断で見落とされやすいのが、機材費ではなく処理にかかる人の時間です。次章で扱います。

撮影より処理に時間がかかる

現場での撮影は数十分から数時間ですが、点群化・不要点の除去・座標変換といった後工程には、それを大きく上回る時間がかかります。

工程所要の目安自動化の可否
飛行計画・標定点設置1〜3時間一部自動
撮影30分〜2時間自動飛行が可能
点群生成(処理)数時間〜半日(PC稼働)自動だがマシン性能に依存
ノイズ除去・地表面抽出1〜3時間(人の作業)半自動
出来形の帳票作成1〜2時間ソフトによる

人が張り付く時間は、撮影より後工程のほうが長くなります。内製化を検討する際は、この処理を誰がいつ行うかを決めておかないと、データだけが溜まって活用されない状態になります。

処理用PCの性能要件も事前確認が必要です。点群処理はメモリとGPUの影響が大きく、一般的な事務用PCでは実用的な時間で終わりません。

用途別の選び方

用途推奨補足
造成の起工測量・土量計算ドローン広範囲を短時間で。標定点の配置が精度を決める
土工の出来形管理ドローン施工中の定期撮影で進捗も把握できる
法面・斜面の変状把握ドローン(LiDAR)植生があれば写真測量では不可
橋梁・トンネルの現況レーザースキャナ細部形状と遮蔽への強さ
建物内部の現況(改修)レーザースキャナ屋内は飛行できない
狭小部・設備の取り合いレーザースキャナ近距離の精度が必要

出来形管理での実務上の注意

土工の出来形管理にドローンを使う場合、押さえておくべき実務上の論点があります。

論点内容
計測時期転圧直後と時間経過後で沈下がある。計測時期を工程に組み込む
標定点の維持施工中に標定点が失われると再設置が必要。位置を記録に残す
立入管理飛行中の直下に人を入れない。作業との時間調整が必要
比較の基準設計データとの差分をどう可視化するかを事前に決める
データの版管理計測日ごとに管理しないと、どの時点の形状か分からなくなる

とくに5番目は、月次で計測を続けると必ず問題になります。ファイル名の規則(現場名+計測日+工区)を最初に決めておくだけで、後の混乱を避けられます。

発注者への説明で使える材料

3次元測量の導入を発注者に説明する際、効果として示しやすいのは次の3点です。

  • 計測の頻度が上がる:人手の測量では月1回だったものが、週次で把握できるようになる
  • 土量計算の根拠が明確になる:点群と設計面の差分として提示できる
  • 記録が残る:施工中の各時点の形状がデータとして保存され、後から検証できる

一方で、「精度が上がる」という説明は慎重に行うべきです。条件によっては従来の測量のほうが安定する場面もあり、過度な期待は後の議論を難しくします。頻度と記録性を軸に説明するほうが、実態に即しています。

運用で決めておくこと

  • 飛行の許可・手続き:空域と飛行方法ごとに要件が異なる。現場着手前に確認する運用にする
  • 保険:機体の損害と第三者賠償の両方
  • データの保管:点群データは容量が大きい。保管場所と保存期間を決める
  • 座標系:現場の座標系と成果の座標系を統一する。ここがずれると全て作り直しになる
  • 飛行の記録:日時、天候、飛行経路、担当者を記録に残す

最後の座標系は、実務でつまずきやすい箇所です。測量の成果と設計データの座標系が一致しているかを、最初の1回で必ず確認してください。

まとめ

ドローンとレーザースキャナは、対象が地形か構造物か、遮蔽物があるか、という条件で使い分けます。導入判断では機材費よりも、点群処理を誰がいつ行うかという体制のほうが重要です。

年間の実施回数が少ないうちは外注で実績を作り、処理の負荷と効果が見えてから内製化を判断する順序であれば、機材を導入したまま使われないという事態を避けられます。

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参考

よくある質問

Q. ドローン測量とレーザースキャナはどちらが精度が高いですか?
用途によります。地表面の広域測量では、標定点を適切に配置したドローン写真測量で数センチ級の精度が得られます。一方、構造物の細部や屋内空間ではレーザースキャナのほうが安定して高精度です。「どちらが上か」ではなく、対象が地形か構造物か、遮蔽物があるかで選ぶのが実務的です。
Q. 植生がある現場でドローン測量は使えますか?
写真測量では草木の上面を地表面として捉えてしまうため、そのままでは使えません。レーザー(LiDAR)搭載機であれば植生の隙間を通った点を拾えるため、地表面を得られる可能性があります。ただし密生地では限界があり、伐採や地上測量との併用が必要になります。
Q. 導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
機材は測量用ドローンで数十万円から数百万円、地上型レーザースキャナは数百万円規模が中心です。加えて点群処理ソフトのライセンス費用と、操縦・処理の習熟時間がかかります。年間の実施回数が少ない場合は、外注のほうが総額を抑えられます。
Q. 資格や許可は必要ですか?
飛行させる空域や方法によって、国土交通省への許可・承認手続きや、機体・操縦者の登録が必要になります。人口集中地区や夜間、目視外での飛行は要件が異なります。現場ごとに空域と飛行方法を確認し、必要な手続きを事前に済ませる運用にしてください。

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